2019年2月10日日曜日

Aves Volant


YILハイパーブックレット - ヴィジュアルアーカイブ「飛ぶ鳥」をお買い上げいただきまして、誠にありがとうございます。ここは本書巻末のQRコードから閲覧できる専用ページです。

ここでは、ブックレットでは説明しきれなかったことや、訂正、追加情報などを提供させていただきます。どうぞご利用くださいませ。



2007年から撮りはじめた野鳥写真も十年を超えました。野鳥の世界は奥が深く、飛翔写真もなかなか満足なものを撮れていませんが、区切りとして一度まとめてみたものです。
同じ様に野鳥に興味を持った方々の何らかのヒントになれば幸いです。


 掲載順は随分悩みましたが、結局一番無難な日本鳥学会発行の「日本鳥類目録改訂第7版」を基準にしました。アマツバメのみツバメと並べるために移動しています。

 キジも鳴かずばうたれまい、と言われていますが、なかなか大空を飛ぶという感じで飛んではくれません。比較的短距離を飛ぶだけで、滅多にチャンスは訪れません。運よく、オス、メス、幼鳥の飛翔シーンを撮ることができました。

 カルガモは留鳥なので、一年中撮影のチャンスがあります。飛び方も素直にまっすぐ飛ぶので、追従は容易です。大型の鳥なので、飛翔写真を撮る練習に向いています。集団で飛ぶことが多いので、撮影する準備もできます。

 普通のハトはカワラバト、もしくはドバトと呼ぶそうです。いつ頃から日本にいたのか、よく分かっていないことも多いようです。
地上では不器用そうな動きをしますが、いざ飛ぶとスピードも速く、本来の美しい姿をみせてくれます。飛び方は素直に直線的に飛ぶので、練習をすれば追従は難しくありません。しかし、比較的小さいので、フォーカスが背景に抜けてしまうことも多く、追従する精度によって結果が異なります。
全国の駅前や公園などに棲息しているので、飛翔写真撮影の練習には最高のターゲットです。

カワウ君もよく飛んでくれますし、素直にまっすぐ飛ぶので追従は難しくありません。しかし、体は真っ黒で、頭部には黄色や白が使われていて、適正露出で撮影するのは難しいターゲットです。エメラルドグリーンの虹彩が綺麗に再現できるように気を付けています。

ゴイサギは夜行性なので、日中はあまり活動してくれません。しかし、稀に飛ぶことがあります。飛行の練習なのか、日中親子で飛ぶシーンは何度も目撃しています。幼鳥のホシゴイは明るいうちからよく活動しています。

アオサギは大型のサギで、飛翔写真は比較的容易に撮れます。ただし、白、グレー、黒と、カメラの諧調再現力のテストのようなカラーリングなので、適正露出で記録するのは意外と困難です。白が飛ばず、黒がつぶれずに階調を残す様に撮影するには、かなり試行錯誤しました。

ダイサギとコサギは打って変わって体が真っ白です。どちらも大型の鳥で、比較的ゆっくりと飛ぶので追従するのは容易ですが、白が飛ばないように撮影中に露出を補正するのはかなり困難です。基本的にはアンダー目に撮って、後で調整する方が良い結果をもたらすと思います。

コチドリは渡り鳥なので、夏の間しか撮影できません。しかも、飛行能力に優れていて、かなり高速に移動します。体色も白と褐色で、露出決定も困難です。飛翔写真はかなり難しい部類だと思います。

イソシギはカワセミなどと同様、川沿いに水面すれすれをかなり高速で飛びます。気づいたときには通り過ぎていたということが多いでしょう。高速ですが、直線的に飛ぶので、馴れると追従できるようになります。イソシギも白と褐色の配色なので、露出が難しいターゲットです。

猛禽類は遭遇確率だけが問題で、撮影に関しては特に難しいことはありません。ゆっくりと上空を旋回していることが多いので、追従できると思います。曇り空か青空かによって露出を補正します。特に曇り空の場合は露出アンダーになりやすいので、かなりプラスの補正をします。
猛禽類は、真下からの単調な写真が多くなってしまうので、できるだけ側面や背面も撮るように心掛けています。

オオタカとハイタカの区別は困難です。未だに現地では分からず、写真から判定しています。

カワセミに魅せられてバードウォッチングや撮影をはじめた方は多いのではないでしょうか。青い鳥自体が少ない上、姿かたちが美しく、魚を捕る所作が大変魅力的な野鳥だと思います。自分が飛翔写真を撮りはじめた原点も、やはりカワセミです。飛翔シーンを何とかカメラに収めたくて近くの川で練習をはじめたのが最初です。
水面ぎりぎりを高速で飛ぶため、最初はまったく撮れませんでした。フォーカスのモードを変えたり、ドットサイトをつけたり、様々な改良と練習を重ねて、ようやく彼らの飛行速度に追従できるようになってきました。

チョウゲンボウは最近では都会にも進出してきているようで、私が住む町の駅前でもよく見かけます。猛禽類の中では比較的遭遇確率が高く、かつホバリングをすることが多いので比較的撮りやすいターゲットでしょう。ハヤブサは遭遇確率が低いのですが、普段飛んでいる時はそれほど高速ではないので、出会えさえすれば、撮影は特に困難な対象ではありません。

カラスは、飛び方は素直なので追従は問題ありませんが、体全体が黒いため、露出は極めて困難です。何も補正しないと、おそらく真っ黒につぶれてしまいます。特に空がバックの時は相当プラス補正しないと黒の諧調を再現するのは難しいでしょう。
カラスの体は、黒と言っても光沢と階調があり、よく見ると美しい鳥です。
うまく露出が決まれば、光沢がある黒が再現でき、緑の黒髪と同様、青光りする様子を写しだすことができます。

ヒバリは、あまりに上空を舞っているため、最初は見えませんでした。声はすれども姿が見えず、目をこらして見ていると、上空に黒い点のように確認することができます。
英国の詩人シェリーが感銘を受けて「あれは鳥ではない」と表現したように、長時間ホバリングしながら鳴く姿は、確かに鳥を超越した並々ならぬエネルギーを感じます。
その姿を何とか収めたくて春になるとヒバリを探してしまいます。真下だけではなく、側面や背面も撮りたかったので、地上に降りるときや飛んだ直後を積極的に狙っています。
後ろのあしゆびの爪だけが長いのは謎です。

飛翔と言ったらツバメです。高速で飛び回るツバメを撮りたくて随分練習しました。最初の頃は気づかなかったのですが、ツバメだと思って撮っていると、普通のツバメの他に、アマツバメやイワツバメが随分混ざっていることが分かりました。ツバメは飛翔に長けた美しいフォルムをしていますが、アマツバメやイワツバメは胴体がずんぐりしていて、可愛らしい印象です。
アマツバメはその胴体に似合わず長い翼を持ち、一生のうちほとんど飛んでいる鳥です。飛翔に特化しすぎたため、地面に降りると離陸できないという話を聞いて驚きました。

イソヒヨドリも珍しく青い鳥です。大変美しい鳥ですが、私のフィールドでは比較的遭遇確率が低く、かつ、波状飛行をするので、個人的には大変難しいターゲットだと思っています。もう少し修行を積む必要があります。
スズメは最も身近な鳥ですが、飛翔写真はかなり難しい部類です。まず、小さいこと、動きが速いこと、あまり長距離飛をばないこと、波状飛行をすること、などの特性が撮影を難しくしています。未だに飛翔写真の歩留まりが悪い鳥です。特に背景があるシーンでは、さらに困難になります。しかし、フォーカスと露出がうまく決まると、大変美しい飛翔形を目にすることができます。

ハクセキレイは個人的には一番難しいターゲットだと思っています。
とにかく機動性が高く、波状飛行をしながら急角度で旋回したりします。ファインダーで追従するのは自分には不可能です。しかも体色がほぼ白と黒で、露出が合いません。多くの場合、白が飛んでしまったり、黒がつぶれます。未だに満足できるカットはありません。永遠のテーマかもしれません。セグロセキレイやキセキレイも同様です。

カワラヒワこそは飛翔形を狙いたい野鳥です。とまっているときと飛行したときの見え方がかなり異なります。飛翔形は美しく、翼の黄色い班が明瞭になります。
スズメと同じくらいのサイズなので、撮影は意外と大変ですが、うまくフォーカスと露出が合うと素晴らしい姿を見せてくれます。

謝辞

日本獣医生命科学大学名誉教授の梶ヶ谷博先生には野鳥の世界を教えていただき、感謝しております。梶ヶ谷先生との出会いがなければ、野鳥に興味を持つこともなく、このブックレットを含め、野鳥関係に携わることもなかったと思います。この場を借りてお礼申し上げます。

撮影

野鳥は動きが速いので、カメラは一眼レフを使用しています。あくまで、光学ファインダーにこだわって使い続けています。将来的にミラーレスなどで、タイムラグがほぼなくなったり、数秒前まで記録するパスト連写機能などが充実するまでは一眼レフにまだ優位性を感じています。
一眼レフであれば、望遠レンズも豊富に揃っているので、野鳥撮影には向いています。ただし、一眼レフに望遠レンズを付けて飛ぶ鳥を追いかけるとなると、相当な腕力も必要になってきます。このブックレットの写真は300㎜F2.8 に2倍のテレコンバーターを付けて600㎜F5.6として使用していますが、はじめた頃は撮影に行くと、毎回腱鞘炎に悩まされました。装備は約5㎏ほどになるため、それから毎日腕立てなどをして体を鍛える必要がありました。写真の腕とは、センスだけではなく、腕力を現す言葉でもあると実感しました。
飛ぶ鳥に追従するには、練習しかありません。大型でゆっくり飛ぶサギや猛禽類、カモの類はファインダーで追えるようになりますが、小さく、機敏に動く野鳥はファインダーで追従するのは難しいでしょう。最近はカメラ用のドットサイトが売られていますが、はじめた頃はそのような製品はなく、銃器用のドットサイトを改造してレンズに取り付けて使用しました。現在もそのまま使っています。それによって小型の鳥の飛翔もいくらか追えるようになりました。

フォーカス

ピント合わせは、100%カメラのオートフォーカスに頼っています。飛翔写真の撮影中にマニュアルフォーカスで調整する余裕はありません。
基本はコンティニアスモードで、グループフォーカスを使っています。空バックなどの場合はオートエリアの方が合焦率が上がるので、カスタムボタンで切り替えるようにしています。

露出

D300まではスポット測光を使っていましたが、D500からは新しく搭載されたハイライト重点測光を主に使用しています。ただし、それでも万能ではないので、鳥の色や背景に応じて適宜露出補正をしています。
シャッター速度と絞りはマニュアルで状況に応じて変更し、露出制御は感度を自動にして行っています。それによって、好みのシャッター速度、好みの絞り値で撮影できますが、常に感度を見て、上がり過ぎないようにシャッター速度と絞りを調整します。
飛行写真を撮る場合は1/1000~1/2000s、とまった鳥は1/1000s以下に落としてできるだけ感度が低くなるようにします。
絞りは、感度がさほど上がらない日中はF8にほぼ固定しています。所有レンズのテスト撮影によって、F8付近で最も解像度が上がることが分かっているからです。
夕方や暗い森などの場合はF5.6~F8の間の絞り値を使います。

使用機材

カメラ

  • Nikon D1x(引退)
  • Nikon D2xs(引退)
  • Nikon D300s(引退)
  • Nikon D500(現行)

レンズ

  • Nikon AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF)(引退)
  • Nikon AF-S VR Nikkor ED 300mm F2.8G(IF)(現行)

テレコンバーター

  • TC-20E II(引退)
  • TC-20E III(現行)